牛のいる町

作品紹介

牛のいる町

20代のころ、夫は南アジアの国々をスケッチしながら旅していました。インドのガンジス川では火葬された遺灰を川に流しているすぐ隣で沐浴や洗濯が行われています。この生と死が混沌と入り混じった風景が、その後の作品の根元にいつもあったように思います。

川を離れた街の中では牛が自由に闊歩する光景に魅了されたようです。川沿いの荘厳なカオスとはまた違った、陽気な聖と俗のカオスです。ヒンドゥー教では聖なる動物とされる牛が人よりも優先され、かといってさほど大切に扱われているといった風でもなく、気ままに街を闊歩してます。人や動物がそれぞれ勝手に生活しながら共存している様は、生きることの自由と開放感に溢れていました。

その後、各地を旅する間に買い求めた牛たちのいる街です。桐材に胡粉を施した街の真ん中には池、そこに月がぽっかり浮かんでいます。

ちなみに夫は丑年生まれの牡牛座。牛には共鳴する何かがあったのかもしれません。